日本バングラデシュ協会 メール・マガジン(151) 2026年5月号 巻頭言:『第13回定時社員総会を前にして~~最近のバングラデシュ情勢~~』 会長 渡邉正人

■目次 
■1)巻頭言:『第13回定時社員総会を前にして~~最近のバングラデシュ情勢~~』
                      会長 渡邉正人

■2)シリーズJICA 第 10回:『バングラデシュにおけるJICAの保健分野への協力の展開 』
                      JICAバングラデシュ事務所
                      所員 岡崎 優実

■3)寄稿:『バングラデシュの周縁から——チッタゴン丘陵地帯の現在』
                      ジュマ・ネット事務局長
                      稲川望

■4)寄稿:『バングラデシュに導かれた5年間―三度の渡航と政変で見たもの―』
                      東京外国語大学言語文化学部 卒業生
                      和田ちひろ
■5)『イベント情報』
■6)『事務連絡』
■7)『読者のひろば』
・メルマガ4月号の各寄稿への読者の感想をご紹介します。
・メルマガ寄稿への感想ほか、お気づきの点など、なんでもお寄せ下さい。
■8)『編集後記』

■1)巻頭言:『第13回定時社員総会を前にして~~最近のバングラデシュ情勢~~』
会長 渡邉正人

日本バングラデシュ協会の社員総会は7月4日に開催予定です。近く会員の皆様宛に社員総会のお知らせを郵送します。総会後に懇親会を開催する予定です。お繰り合わせの上ご参加くださるようご案内申し上げます。
4月29日、ダッカ訪問中の鈴木憲和農林水産大臣が、タレク・ラーマン首相、ロシッド農業大臣はじめ閣僚と会談し、高市総理からラーマン首相宛の親書を渡し、日バ経済連携協定(EPA)発効に向けて、和牛をはじめとした日本産食材の輸出拡大についての協力などを要請しました。翌30日にはコックスバザールにあるロヒンギャの避難民キャンプを視察しました。
4月末までの現地の情勢について以下のとおりまとめました。

1. 新政権の発足
 2月12日、総選挙は概ね平穏な環境の下で実施された。同時に実施された憲法・行政・司法・選挙制度等の包括的改革案(以下「7月憲章」)の是非を問う国民投票では7割近い賛成票が投じられた。
総選挙では、バングラデシュ民族主義党(以下BNP)が約7割の209議席を獲得する地滑り的な勝利をおさめ、単独政権の樹立を確実にした。イスラム政党であるジャマティ・イスラミ(以下JI)は、穏健なイメージと福祉重視を訴え過去最大となる62議席を獲得し野党第一党となった。一昨年の政変の起爆剤となった学生活動家を中心とした国民市民党(以下NCP)は6議席にとどまった。JI、NCP等の政党は11党連合として選挙戦を通じ連携したが、選挙後も野党として与党BNPに対抗する構えだ。イスラム政党が主要野党としての役割を担うのは、同国の政治史において初めてとなる。
タレク・ラーマンBNP党首は、2月17日、首相就任の宣誓を行い、新内閣を発足させた。新内閣には、最後のBNP政権となった第二次カレダ・ジア政権(2001年~06年)において閣僚等を務めたBNPの重鎮や実業家他が起用された。

2. 「7月憲章」を巡る争点
2月17日の首相就任式に先立ち、同日、選出された議員全員による宣誓式が行われた。報道によれば、宣誓式において議員は2つの宣誓を行うよう求められたようだ。1つ目は、憲法を遵守するという従来から行われてきた宣誓であった。2つ目は、「7月憲章」を実現する「憲法改正評議会」のメンバーとしての誓約であった。タレク・ラーマン党首率いるBNPの議員たちは2つ目の宣誓を行わなかったとして、JI及びNCPの議員たちは反発し、その直後の首相の宣誓式への参列をボイコットした。
国民投票の対象となった「7月憲章」のベースとなる包括的改革案については、学生活動家及びJI等の勢力としては、総選挙の実施前に暫定政権のもとで実現されるべきとの立場であった。これに対し、BNPは、総選挙後に国民の信託を受けた新政権が改革の実現を担うべきと主張し、両者は厳しく対立していた。最終的にはユヌス首席顧問の調整により、総選挙と国民投票を同時に実施することで妥協に至った。BNP政権への権力の移譲に伴いこの問題が再燃している。憲法改正を通じた「7月憲章」の実現を唱える政権与党側と、国民投票の結果を尊重し暫定政権が描いた日程どおりに「7月憲章」の実現を目指すべきと主張するJI、NCPを含む11党連合との間で膠着状態が続いている。

3. エネルギー危機
 4月1日付の英国のメディアは、「米イラン戦争で最初に燃料が尽きる国」との見出しの下、ダッカにおけるガソリンスタンド前の長蛇の列を報じた。石油備蓄は2週間分しかないとか、政府が中東以外の国々からの原油等確保に努めているとか、ロシア産ディーゼル燃料の確保のため対ロシア制裁の免除を米国に求めているなどと報じられた。現地紙では、インドからバングラデシュにパイプラインを通じ燃料が供給されていることや、政府庁舎内における電気等の使用の制限及び就業時間の短縮、店舗の営業時間の短縮、公務員の海外出張制限等を含むエネルギー危機対応緊縮政策が報じられた。米・イラン間の緊張状態が長期化すれば、原油等の中東依存度の高い開発途上のアジアの国々に深刻な打撃を与える。5月号がお手元に届く前に正常化に向かうよう切に望みたい。

4.対インド外交
政変直後にインドに逃れたハシナ前首相他の引き渡し問題などから暫定政権の間は対印関係は低調なままで推移した。
インドは、昨年末のカレダ・ジア元首相の国葬にジャイシャンカル外務大臣を派遣した。総選挙後の新首相の就任宣誓式にはオム・ビルラ連邦下院議長を派遣した。モディ・インド首相は、投票日直後にタレク・ラーマン氏に電話で祝意を伝え、その後、同首相宛にインドを訪問するよう招待する書簡を送付した。
4月上旬、バングラデシュのカリルル・ラーマン外務大臣がインドを訪問した。バングラデシュ側としては政変後において最も高いレベルの訪問となった。
インドとの関係では、前首相他の引き渡しに加え、ガンジス河水資源分配問題、国境において頻発する発砲事例などがあり、国内には根強い反印感情がある。新政権として対印関係を改善する上で、国内世論との関係において注意深い舵取りが必要となる。両国関係の安定化は、両国と友好的な関係を維持している日本にとり重要であり、ベンガル湾からインド北東部を繋ぐ地域連結性の向上にも寄与するだけに、注目していきたい。(4月30日記)

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