日本・バングラデシュ経済関係

日本とバングラデシュの関係を見る際に、私たちが実感を伴って感じることができるのが、経済関係ではないかと思う。両国の経済関係を身近な視点から順を追って見ていき、今後の可能性についても考えてみたい。

まずは経済関係を見る際に、私たちの生活にも関わってくる、日バ間の貿易の状況を見てみたい。バングラデシュから日本へは衣料品の輸出が総額の約70%を占め、他には皮革製品、魚介類等、労働集約的な製品が大部分を占める。現在、中国に続く世界第2位の衣料品の輸出国となったバングラデシュからの衣料品の輸入は、日本における衣料品全体の約3.3%(金額ベース、2017年12月時点)を占めている。2012年には、全体の1.5%だったが、ユニクロやGAP、H&Mといったファストファッションを中心とする輸入商品の増加により、輸入金額ベースではこの5年で約3倍の増加が見られた。衣料品の商品タグを見ると、「Made in Bangladesh」を目にする機会が増えているのは、この数値が裏付けとなっている。私たちの身の回りにもバングラデシュとつながりがあるということを是非とも知っておいていただきたい。

逆に、日本からバングラデシュへの輸出には、輸送機器や部品、鉄鋼製品、機械などが占め、バングラデシュの工業化を支える存在と言っても過言ではない。特にバングラデシュにおいてはかねてから多くの日本車が走っていたが、最近では日本で払下げになった中古車ばかりでなく、新車も見かけるようになり、日本の優れたイメージや親日国となった一つの理由にもなっている。

さらに、直接的な経済指標である日本企業によるバングラデシュへの投資について見ていきたい。最新のジェトロ・ダッカ事務所のデータでは、269社(2018年5月時点)の日本企業が進出しており、2016年のテロ前の238社(2015年)と比べても、日本からの投資にブレーキがかかっていないことが分かる。これまで日本からバングラデシュへの投資は、主に同国の人件費の安さを活かした輸出志向型・労働集約的な縫製業や皮革産業であったが、近年はホンダをはじめとする現地市場志向型の製造業が進出するなど新たな局面に入り、英語が使える優秀なIT人材の活用も注目されている。経済成長率を見てもここ数年は7%を超え、2021年には中進国入りすることを目指している。日本はアライハザール(ナラヨンゴンジ県)に加え、ミルサライ(チッタゴン県)にも日本企業専用の経済特区を獲得し、マタバリ(コックス・バザール県)での火力発電所や港湾等、インフラ開発にも専念している。日本企業にとってバングラデシュはつい最近までなじみの薄い国とされていたが、今後は現実的に投資を検討する対象国へと捉え方に変化の兆しが見られている。

現状バングラデシュは、世界銀行が毎年発表するビジネス環境ランキング「Doing Business」において176位(2018年)と低調であるものの、2020年までに99位に向上することを目指し、投資ワンストップセンターの設立等、国内の環境整備を急ピッチで進めている。各国が投資誘致を進める中で、バングラデシュも他国に乗り遅れまいと大きな目標を掲げ、経済成長の実現に力を入れている状況だ。

参考までに、より身近な点として、在日バングラデシュ人の人口推移を見てみたい。法務省の「在留外国人統計」によると、14,577人(2017年12月時点)が日本に暮らしている。これまでの在日バングラデシュ人の推移を見ると、1986年のプラザ合意以降、査証免除協定の停止で減少する時期もあるが、その後は増加の一途を見せ、この5年だけ見ても、約1.7倍に増加している。近年の増加の理由は、全ては経済的背景ではないものの、主に技能実習や留学、人文知識・国際業務及びそれに伴う家族帯同、定住者等による増加に起因している。在日バングラデシュ人の増加は、例えば、毎年ベンガル暦の新年である4月14日に合わせて池袋西口公園で開催されるバングラデシュ新年祭「ボイシャキメラ」に足を運んでみても、年々出店するバングラデシュカレーのお店が増え、身近にバングラデシュとのつながりが増えていると感じられる。このように、人の行き来に注目してみても、両国関係を測る一つの指標になるだろう。

今後の2国間の経済関係を見ていくに当たり、ODAや円借款により、ダッカメトロや鉄道輸出等の大型案件が引き続き進んでいる中で、民間投資も増加し、日本たばこ産業(JT)が現地のタバコ会社の買収を発表するなど、大型M&Aの動きも見られ、輸出志向型の製造地としてだけでなく、1億6千万人の人口を擁する一大消費市場としても注目されている。これまではバングラデシュは貧困国のイメージで語られていたが、粘り強く現地で事業を営む日本企業と近年増え続ける投資事業等によってその印象はアップデートされ、大きな成長が期待される有望国へと見方が変わり始めている。今後両国の経済関係がより深まっていくことを期待したい。(文責:安藤裕二)

 

(表1)日本‐バングラデシュ間の貿易統計

(単位)100万米ドル、%


(出典)バングラデシュ中央銀行、バングラデシュ輸出振興庁よりジェトロ作成

 

(表2)バングラデシュ進出日系企業数の推移

(出典)ジェトロ・ダッカ事務所
※2018年は5月末時点のデータ

(表3)在日バングラデシュ人の推移

(出典)法務省「在留外国人統計」より筆者作成

(参考情報)各種経済レポートについては、ジェトロウェブサイト「調査レポート」(バングラデシュ)をご参照いただきたい。

https://www.jetro.go.jp/reportstop/asia/bd/reports/