日本バングラデシュ協会 メール・マガジン(48号)2018年7月20日

日本バングラデシュ協会の皆様へ

■目次
1)『 日本バングラデシュ協会メルマガ48 号会長メッセージ
―バングラデシュ マクロ経済の展望とJICAの取り組み:
成長の発火点(Ignition Point)を迎えた新興国―』    会長:堀口松城
2)『バングラデシュと私』          大阪外国語大学名誉教授 溝上富夫
3)『現地便り:道~出会いこそ人生』       鈴木織機専務取締役 間瀬隆行
4)『古参、青年海外協力隊バングラデシュOBの独り言』     理事:佐藤利哉
5)『日本とバングラデシュの『絆』
― Jalal:二つの国民の心を結んだ人 ―』         理事:太田清和
6)『イベント・講演会のご案内』
□【ドキュメンタリー&トーク】「ロヒンギャの証言 -無国籍であるということ」
(主催:世界の医療団(認定NPO法人) 2018年7月26日)
7)『事務連絡』

■1)『 日本バングラデシュ協会メルマガ48 号会長メッセージ
―バングラデシュ マクロ経済の展望とJICAの取り組み:
成長の発火点(Ignition Point)を迎えた新興国―』    会長:堀口松城

さる6月13日開催された「日本バングラデシュ協会 企業情報交換会」において、
JICAの南アジア第四課(バングラデシュ担当)の高橋暁人課長より、近年目覚ましい
経済発展を続けるバングラデシュのマクロ経済の展望を踏まえ、バングラデシュのさ
らなる発展のため、JICAがいかに取り組もうとしているかにつき興味深い講演があり
ました。その内容は企業会員のみならず、バングラデシュの発展を願う一般会員の皆
様にとりましても関心の高い問題と思われますので、以下要旨をご紹介します。
なお、本講演は、「企業情報交換会」の会員へのアンケートで、
バングラデシュのマクロ経済に関する講演希望があったことを踏まえ、高橋課長にお
願いして行われたものです。

1.バングラデシュの概況
(1)最初に「マクロ経済は堅調」として以下の諸点を挙げています。
(1)経済成長率は過去10年間平均6%超。近年は7%に迫る。
(2)マネーサプライの伸びを抑えてインフレ率を抑制。
(3)財政赤字はGDP比4%前後。歳入は徴税能力の強化が課題。
(4)経常収支はおおむね均衡。貿易赤字を海外労働者送金で補填。
(5)輸出の伸びは約8割を占める縫製品が牽引。産業多角化が課題。
(6)資本収支も小幅な黒字。但し、外国直接投資の伸びは低調。
(7)国際収支の黒字により外貨準備は300憶ドル(輸入7か月分)。
(8)対外公的債務レベルは約15%と低レベルで推移。IMF も評価。

(2)次に、「バングラデシュの産業構造」として、「縫製産業を中心とする製造業
が経済成長を牽引、皮革産業等一部の産業の成長で産 業多角化の予感」としつつ、
セクター別GDPシェアー、GDP成長率を以下の通り捉えています。
(1)農業(第1次産業):    対GDP比 15.4%、 GDP成長率 2.8%
(2)産業(第2次産業) :   対GDP比 31.5%、 GDP成長率 11.1%
製造業       対GDP比 21%、  GDP成長率 11.7%
(3)サービス(第3次産業): 対GDP比 53.1%、 GDP成長率 6.3%

(3) バングラデシュの投資環境及び外国直接投資(FDI)
外国直接投資は、近隣の新興国と比較して未だ僅少で、投資環境は改善の余地あり
とし、新興国の間のビジネス環境競争順位は、190か国中第177位としています
(出典世銀)。

(4)バングラデシュの公的債務の動向は、現状では公的債務のレベルは低レベル。
しかし今後の動向は要注意で、理由は次の通り。
(1)現在、財政収支は赤字続きで、公的債務増大の恐れあり。
(2)特に天然ガスの純輸入への転換。
(3) 中国を含む他ドナーの貸付動向等も要注意。
(4)最貧国卒業すれば、公的債務免除、 特恵関税などが適用除外。

2.「成長の発火点を迎えたバングラデシュ」の今後の発展。
(1)国内需要や資源の開発をベースとした自然発生的な経済成長から、1,2の産業
の発展をベースに加速化して発火点に達すると、成長を支える産業基盤が広がり、
成長は加速化。インフラへの投資と技術の普及が進行。また、消費者の購買力が上
昇し、経済成長も国内需要の動向がより重要な要素に。この段階で経済は成熟局面
に。

(2)2016年のバングラデシュの一人当たり国民所得(GNI)は1,330ドルで、他国の
例では1,000ドルを超えると、成長加速化の傾向。
(3)人口は平均年齢24歳で、今後40年に亘り人口ボーナス期に。生産拠点及び一大
消費市場となる可能性秘め、成長を支える見込み。
(4)新中間層の拡大と国内市場成長の傾向。ミャンマーより多くの中間層が存在。
他の新興国に迫る勢い。

3.発火点を迎えたバングラデシュの発展に必要なJICAの取り組み
(1)インフラの整備・改善:インフラ・マスタープランや地域総合開発プラン等の
作成。上記計画等に基づく電力、運輸、都市開発に係わるインフラの整備、改善:
(1)マタバリ石炭火力発電所事業(7,000億円)
(2)ダッカ都市交通整備事業(2,800億円)
(3)国際空港拡張事業 (1,920億円)
(4)ジャムナ鉄道専用橋建設事業(1,500億円)
(5)カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設及び既存橋改修事業(1,033億円)
(6)ダッカ・チッタゴン基幹送電線強化事業(700億円)

(2)FDIの促進と輸出の拡大
(1)質の高い産業成長・経済発展にむけた開発指針やビジョン策定
(2)投資促進・産業競争力強化の政策・制度環境改善
(3)日本企業向け経済特区開発など海外直接投資促進事業

(3)産業人材の育成・スキルの開発・技術の導入
(1)裾野産業の人材育成:縫製品が輸出額の8割との産業構造から産業多角化を目
指すため、裾野産業育成や産業の人材育成等を支援(特にライトエンジニアリン
グ産業、プラスチック産業)。
(2)IT人材育成:「日本市場をターゲットとしたICT 人材育成プロジェクト」
バングラデシュにおいて、日本市場を念頭に(1)ICT人材育成支援に係る官民連
携体制の確立(2)民間企業によるICT人材育成プログラム・モデルの形成(3)
ITEE(情報処理技術試験)の運営体制改善等を行い、日本市場で活躍できるICT人
材の育成を目指す。「宮崎・バングラデシュモデル」:両国で不足するものを補
完しあう新たな協力枠組み。(すでに第1期生は日本の企業に就職。)
4.社会の安定
(1)持続的成長に向けたもう一つの課題:政情、社会安定が不可決。
(2)バングラデシュ政府の持続可能な開発目標実現への一層の支援。
(3)農業の育成、保険システムの改善、教育の普及、防災・気候変動への対応能力
強化、ガバナンス改善が必要。これらの活動を通して社会における脆弱性を軽減し
て、社会の安定化を図る。注.バングラデシュに対する円借款事業の推移
(1)円借款の新規供与規模は大型案件の増加に伴い2010年代より拡大し、貸付実行
は大型案件の工事開始に伴い増大傾向している。
(2)その結果、バングラデシュは、有償資金協力供与先として、2014年1位
(1,210億円)、2015年6位(1,333憶円)、2016年3位(1,735憶円)、2017年2位
(1,782憶円)と推移している。
(3)なお、最近の最大の円借款新規供与国はインドであるが、2017年の新規供与額
は3841億円とバングラデシュのほぼ2倍であり、人口規模、国土面積等両国の差を
考えると、バングラデシュのウェートの高まりが注目される。


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