日本バングラデシュ協会 メール・マガジン(143)2025年9月号 巻頭言:『政変から1年後のバングラデシュ』 日本バングラデシュ協会会長 渡邊正人

■目次
■1)巻頭言:『政変から1年後のバングラデシュ』
                      日本バングラデシュ協会会長
                      渡邊正人

■2)『お祝いのことば』

■3)寄稿:シリーズJICA第8回:『ダッカにおける廃棄物管理の取り組み~クリーンダッカの歩み~』
                      JICAバングラデシュ事務所
                      所員 大澤 英輝

■4)寄稿:『心に残る言葉―アーティストたちとの出会いを通じてー』
                      外務省職員
                      川上貴之

■5)寄稿:『インド・バングラデシュ関係のゆくえと日本の役割』
                      岐阜女子大学南アジア研究センター
                      笠井亮平
■6)『お詫びと訂正』

■7)『イベント情報』

■8)『事務連絡』

■9)『読者のひろば』
・メルマガ8月号の各寄稿への読者の感想をご紹介します。
・メルマガ寄稿への感想ほか、お気づきの点など、なんでもお寄せ下さい。

■10)『編集後記』

■1)巻頭言:『政変から1年後のバングラデシュ』
                      日本バングラデシュ協会会長
                      渡邊正人

8月で政変から1年が経過した。総選挙に向けた動き、米国相互関税への対応など最近の動きを現地報道に基づきまとめた。

1.総選挙を巡る綱引き
ハシナ政権の崩壊から1年目の8月5日、ユヌス首席顧問はテレビ演説を行い、懸案となっていた総選挙(議会選挙)の時期について、来年2月に始まる断食月(ラマダン)前に総選挙を実施すると発表した。
当初、暫定政権は総選挙実施の前提として以下の2つを達成すると表明していた。
ひとつが憲法等法制度、司法、選挙制度など広範な分野における改革の実現、もうひとつがハシナ前首相を含むアワミ連盟関係者の裁判である。特に総選挙の時期と達成すべき改革を巡り政党間の立場の違いが表面化していた。
前政権の与党であったアワミ連盟とライバル関係にあるカレダ・ジア元首相率いるバングラデシュ民族主義党(BNP)は、16年間に亘り政権から遠ざかりはしたものの、小選挙区制を中核とする現行選挙制度のもと、アワミ連盟の政治活動が封じられる中、総選挙では優位であると見られている。BNPは、総選挙後の新政権が暫定政権を継承し改革を継続することは可能であり総選挙の早期実施を求めるという立場である。政変直後、暫定政権の発足と政治情勢の安定化に向け重要な役割を担ったとされるバングラデシュ国軍も、総選挙の早期の実施を求めるとの立場を鮮明にしてきた。
これに対し、政変の起爆剤となった学生たちを中心に2月に創設された国民市民党(National Citizen Party)や、イスラム政党であるジャマティ・イスラミ党(JI)などは、改革の実施後に総選挙を実施すべきであり、選挙制度では比例代表の割合を増やすべきであるなどと主張してきた。
6月にイギリスを訪問したユヌス首席顧問がロンドンにおいてタリック・ラーマンBNP暫定議長と会談後、2月総選挙への流れが強まったと見られている。ユヌス首席顧問は、日本訪問直後でイギリス訪問直前の6月初頭には総選挙の時期は来年4月になると発言していた。タリック・ラーマン氏は、カレダ・ジア元首相の長男であり、2008年の総選挙においてアワミ連盟が勝利した後はロンドンに逃れていたが、BNP内の実力者である。
今後は選挙管理委員会が選挙日の確定を含め選挙の舞台作りの当事者になる見込みだが、ユヌス首席顧問の演説どおりに2月の総選挙実施を求めるBNPと、総選挙実施前に改革の実現を強く要求するNCPなどからの相異なる要求が暫定政権に向けられると見られる。現時点において次回の総選挙への参加の道が封じられているアワミ連盟の不満が表面化するリスクにも警戒が必要となろう。政治から目を離せない季節に入った。

2.米国の相互関税への対応
4月にトランプ政権が相互関税を導入すると公表して以降、米国との貿易関係を有する世界中の国々は振り回されてきた。4月当初の米国政府の発表では、バングラデシュから米国向けの輸出に課される相互関税は37%であった。インド等の周辺国との比較において高いレベルであった。それが、7月31日、バングラデシュから米国向けの輸出に課される相互関税は20%になると発表された。
米国は最大の輸出相手国であり全輸出額の19%を占める(2023年度バングラデシュ中央銀行統計)。うち90%が既製服(RMG)とされており、ベトナム、インドネシア、インド等との競争に晒される中、相互関税20%はバングラデシュの繊維業界にとってはいちおうは安堵できるレベルとなったようだ。この合意に至る過程で、米国より、航空機、米国産小麦、大豆、液化天然ガス(LNG)などの購入を約束したと現地紙等は報じている。米国産綿花の輸入量増加や軍事装備品の購入も約束した可能性があるとも報じられた。相互関税20%への引き下げはユヌス首席顧問率いる暫定政権の経済外交がもたらした成果であると評価する向きもあるが、苦渋の選択であったろうと推測される。
バングラデシュはアジアにおける米国の対外援助の主要なパートナーであった。トランプ政権による米国援助庁(USAID)の解体・再編による影響も開発の観点で無視できない。

3.今後の日本バングラデシュ関係
総選挙が実施されれば、勝利した政党が率いる政権が発足し暫定政権は役割を終える。新政権は次の総選挙までの向こう5年間国政を担い続ける可能性がある。
親日国バングラデシュでは過去10余年、企業の進出が相次ぎ、同国の安定と発展は日本では官民共通の関心事となっている。ロヒンギャ難民への対応において暫定政権を含めてバングラデシュは責任ある役割を担い続けている。
日本は、2026年11月に迫るバングラデシュの最貧国(LDC)からの卒業を見越し、昨年より経済連携協定交渉を進めている。バングラデシュとの良好な二国間関係と同国の潜在力を重視する日本として、ベンガル湾地域の安定と発展に積極的に貢献するためにも、総選挙後に発足する新政権との間では暫定政権と同じように協力関係を構築していくことが重要となろう。バングラデシュの政治、経済の動向をこれまで以上に注意深く見守る必要がある。(8月31日記)

(以上は日本バングラデシュ協会としての意見ではなく筆者個人の考えである。)

■2)『お祝いのことば』

日バ協会の発足時から2年間副会長を務められ、さらに6年間アドバイザーを務めてくださったモンズルール・ハック(Monzurul Huq)氏が、今年度の外務大臣表彰を受けられました。ハック氏は、バングラデシュで最大の発行部数を誇る日刊紙プロトム・アロ(Protohm Alo)の東京支局長を永らく務められ、日バ関係に大きく貢献されたことから今回の受賞が決まりました。日バ協会一同からもお祝いを申し上げたいと思います。ハック氏の業績や人となりについては、近々本メールマガジンに掲載予定です。

□令和7年度外務大臣表彰
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_02653.html

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