日本バングラデシュ協会 メール・マガジン 73 号(2020 年7月号)1) 巻頭言:『新型コロナ・ウイルス(COVID-19)の影響下のダッカに滞在して』 -考えていたより進んでいるジェネリック先進国バングラデシュ- (監事 伊藤 隆史)、 2) 会員証言:西パキスタンから見たムジブル・ラーマン -ムジブル・ラーマン生誕100周年シリーズ No. 7-他

■目次

1)巻頭言: 『新型コロナ・ウイルス(COVID-19)の影響下のダッカに滞在して』
-考えていたより進んでいるジェネリック先進国バングラデシュ-  監事  伊藤隆史

2)会員証言:西パキスタンから見たムジブル・ラーマン
-ムジブル・ラーマン生誕100周年シリーズ No. 7-  福島応援プロジェクト代表
会員 長田満江

3)会員寄稿: ルバイヤット・ホセイン監督作品映画「メイド・イン・バングラデシュ」
神戸女学院大学文学部英文学科准教授
会員:南出和余

4)会員寄稿:『3年間の勤務を終えて(連載 その1)
ダッカ日本人学校 前校長 会員 島村雅彦

5)バングラデシュの独立プロセスと日本の関わり
-バングラデシュ独立・国交50周年シリーズ No.1-
はじめに:日本とベンガルの交流史
理事;太田清和

6)イベント、講演会の案内

7)『事務連絡』


■1)巻頭言: 『新型コロナ・ウイルス(COVID-19)の影響下のダッカに滞在して』
  -考えていたより進んでいるジェネリック先進国バングラデシュ- 監事 伊藤 隆史

 

私は会社の業務で3月8日にダッカに出張し、4月2日にチャーター機で帰国しました。今回の滞在で、バングラデシュの先進的なジェネリック医療薬分野を見る機会を得ました。

 

1.新型コロナ・ウィルスのためダッカ留置の身に

3月8日の出張に先立ち、バングラデシュでの新型コロナ・ウィルスの感染状況を確認してみましたが、国内感染者はまだ報告されていませんでした。まさか商用航空機が欠航となるとは思わず、3月26日にダッカを離れる予定で出張をしました。

私のダッカ到着翌日の3月9日、WHO Situation Report No. 48 にバングラデシュでの最初の感染者3名が掲載されました。その後、3月19日にReport No. 60に死者1名の報告がありました。そうこうしている内に航空会社から予定した帰国便がキャンセルされたとの連絡があり、再開の見通しはないと追記されていました。

私の滞在中にバングラデシュ政府は,新型コロナ・ウイルスの蔓延を防ぐため,政府機関の業務を3月26日(木)~4月25日(土)まで停止とし(その後停止期間を延長)、すべての国民に対して,外出についても自粛、禁止すると発表しました。違反者に対しては厳しく対処し,法的措置を講じる旨も発表しました。3月26日より多くの商用航空機が欠航し、4月に入ってからは、全ての外国航空機の離着陸が停止となりました。

2.常備薬の現地調達を試みる

一瞬、頭を交錯した思いは、「え~、ほんと・・・?」そして、「まあ、しょうがない。」次に「さて、どうやって過ごしていくか(生きていくか)・・・。」になりました。1980年代にチッタゴンで経験した、夜間外出禁止令や戒厳令のように、直ぐに命にかかわることはないのが救いでした。

しかし、心臓の薬(ベーター・ブロッカー:交感神経系の薬で、心臓への負荷を低減させる薬)をはじめとして、いくつかの薬の処方を受けており、それが1週間くらいで切れることが問題でした。

もう、他に方法はなく、現地調達を試みることとしました。日本での薬名、ネットで調べて薬の詳しい薬効を薬局に持って行ったところ、薬剤師と思われる人が、時間を掛けて調べて全て該当する薬を奥から見つけてくれました。これで、もう少し生き延びられると安堵しました。

シリアスな薬は、普段使用しているものを必要十分に携行するのが原則ですが、短期出張の場合1ケ月分以上も携行することはなかなか困難で、緊急な場合は、現地調達も可能であることを知りました。

3.バングラデシュ国内でのジェネリック医薬品の開発

5月5日付の現地紙デーリースター紙によれば、バングラデシュの製薬会社では、抗インフルエンザ・ウイルス感染薬『ファビピラビル(Favipiravir)』(日本での商品名:アビガン)が製造されており、新型コロナ感染症にも有効であろうとのことで治験の準備をしているとのことです。治験により有効性が確認されれば、国内製薬会社5~6社で需要を賄うだけのファビピラビルを製造する準備をしているとのことですので、ジェネリック先進国と言えるのでしょう。

医療薬の新規開発は、費用面で困難ですが、ジェネリックの場合は、製造に必要な有効医薬品成分(API・Active Pharmaceutical Ingredient・医薬品原薬)が入手出来さえすれば、まさにPCの組み立てと同じ様に、どのような医薬品の製造もできるようです。バングラデシュ政府も国内で必要な医薬品は、国家セキュリティの為にも100%の国内での製造を目指しているとのことで、力を入れている分野です。

4.気が付けばバングラデシュ

今回の経験を通じ、2015年当時の在ダッカ日本大使が「バングラデシュで今後期待される産業は、医薬品産業」と言われていたことを思い出しました。またアジ研ワールド・トレンド(2015年1月号)に、アジ研村山真弓主任調査研究員(現日本貿易振興機構理事、当協会副会長)が同僚の方と『気が付けばメイド・バイ・バングラデシュの医薬品産業(後発性利益の享受)』を著されてもいます。同記事のURLは次の通りです。

https://ir.ide.go.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=39940&item_no=1&page_id=39&block_id=158

人口が2億人に届こうとしている国です。あらゆる病気が存在する国ですので、必要な薬は必ずどこかにあるはず。長年バングラデシュへの行き来をしている身ながら、命に係わる薬をダッカにて調達出来るとは思ってもいませんでした。感心すると同時にバングラデシュを見直した次第です。

以上のような画期的な経験をしている中、ダッカ日本人会/商工会のダッカ・成田直行チャーター便にて4月2日に帰国することが出来ました。チャーター便運航のために奔走いただいた関係者の方々に深く感謝を申し上げます。

 

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

既存ユーザのログイン