日本バングラデシュ協会 メール・マガジン101号(2022年5月号) 巻頭言:『社員総会を前にして〜〜バングラデシュとウクライナ情勢〜〜』 会長 渡邊正人

日本バングラデシュ協会の皆様へ 

■目次  
■1)巻頭言:『社員総会を前にして〜〜バングラデシュとウクライナ情勢〜〜』
                                   会長 渡邊正人
■2)寄稿:『ベンガル人も「行ったことない・よくわからない」という謎多き (!?) チッタゴン丘陵』 
―その1: ベンガル人の入植と先住民との紛争-
                                   NPO法人WELgee 代表
                                   渡部カンコロンゴ清花
■3)寄稿:『日本で学んだバングラデシュの美術作家』
                                   福岡アジア美術館
                                   学術交流専門員
                                   黒田雷児
■4)理事連載:『バングラデシュの独立に寄り添う(1972年5月):ジャムナ橋の夢を追う』
        -バングラデシュ独立・国交50周年記念シリーズ No. 23-
                                   理事 太田清和
■5)イベント、講演会の案内
・映画『メイド・イン・バングラデシュ』
・バングラデシュ・ビエンナーレに出展した日本人美術参加の個展
  風倉匠(かざくら しょう 1936-2007)の個展
■6)『事務連絡』

■1)巻頭言 社員総会を前にして〜〜バングラデシュとウクライナ情勢〜〜
                                   会長 渡邊正人

1.社員総会のご案内
本年の社員総会は7月2日(土)に開催予定です。個人会員、法人会員には6月上旬頃にご案内が届くことになると思います。昨年、一昨年同様、オンライン参加も可能です。
本協会の会員数は、4月時点において個人会員は対前年比で数名増となり、法人会員は74社・団体に増えました。過去2年余りのコロナ禍の下でも法人会員数が大幅に増えたことは企業情報交換会を充実させて開催してきた成果だと考えます。日本企業の間でバングラデシュへの関心が高まっていることの証でもあります。最近はコロナ禍以前のような対面による行事の開催も徐々に行われるようになりました。本年は外交関係樹立50周年に当たります。有意義で活発な意見交換を期待しております。

2.ロシアによるウクライナ侵攻
2月24日に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は世界を震撼させました。欧州では、1945年の対独戦争終結以降、冷戦期も含め、今回のような大規模な侵攻と戦闘が起きることはありませんでした。
1991年から始まった旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国内における分離・独立を巡る紛争は、2000年のセルビア民衆革命によるミロシェビッチ大統領の退陣を経るなど10年続きました。ボスニア、コソボ等で見られた人道上の危機は世界に衝撃を与え、解決に向け米国等NATOが軍事的に介入しましたが、その手法は主に空爆に限られ、戦闘を目的に地上軍が投入されることはありませんでした。
ウクライナを舞台にした戦いは、ウクライナ及びロシア両軍による全面戦争という次元を超え、武器、情報の提供を通じウクライナを支援する米国等NATOとロシアとの対立という構図があります。旧ユーゴ紛争の10年間を通じ、400万人以上が難民となりましたが、ウクライナからは2か月近くで既に500万人以上が国外に避難しております。クリミア半島の帰属など根深い問題が絡むだけに解決に向け厳しい前途が予想されます。ロシアやウクライナが、エネルギー、食糧、肥料、希少資源等の主要な供給国であるだけに、事態が長引くほど、欧州のみならず世界経済、更には特にエネルギーや食糧の対外依存度の高い途上国に及ぼす影響は予測し難いものがあります。

3.日本バングラデシュ外相会談
4月11日、来日したA.K.アブドゥル・モメン・バングラデシュ外務大臣と林芳正外務大臣の会談が行われました。コロナ禍以降では、対面による初の両国間の外相会談でしたが、ウクライナ情勢についても話し合われました。林大臣は、ロシアによる侵略は、欧州のみならずアジアを含む国際秩序全体の根幹を揺るがす深刻な事態であり、力による一方的な現状変更を決して認めてはならない、民間人に危害を加える国際法違反の行為も厳しく非難する旨日本の立場を表明しました。モメン大臣からは、ウクライナ情勢を深く懸念している旨の発言があり、両大臣は、安保理改革に関する議論を含め、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。

4.ウクライナ情勢に関するバングラデシュの立場
ダッカ発の報道を読む限り、バングラデシュの立場からは、国際法及び領土の主権と一体性の尊重を重視し、破壊と流血が拡大することへの深い憂慮を表明しつつも、ロシアとの関係は悪化させたくないとする苦渋の思いが感じとれます。
 その背景として、超大国間の争いの中ではどちらの側にも与したくないとする伝統的な非同盟の考え方が浸透しているとの見方があります。電力不足解消のための国家事業であるルプール原子力発電所建設計画がロシアの協力の下で進められていることや、近年、バングラデシュ国軍が中国とのバランスをとりロシア製武器の調達を増やしてきていることなども理由として挙げられております。バングラデシュ独立戦争の勝利を決定づけた1971年12月のインド国軍による東パキスタン侵攻(第3次印パ戦争)に際し、米国等が安保理においてインドを非難する決議案を提案したのに対し、ソ連が累次にわたり拒否権を行使し、バングラデシュを支援したインドを国際場裡において守ったことが、ロシアとの「歴史的結びつき」として影響を及ぼしているとの見方もあります。
 インドはロシアを擁護こそしないものの、今までのところ対ロシア非難に与することを回避しており、インドとの関係を重視するバングラデシュの立場に影響を及ぼしているとも考えます。
厳しい対ロシア制裁を導入している西側世界からバングラデシュを含むアジア、中東、アフリカ、中南米等の国々への働きかけが引き続き行われると予想され、注視したいと思いますが、バングラデシュに関わる以上、同国の事情を承知しておくことは重要と考えます。
ウクライナを舞台にした戦闘と対立は、ソ連崩壊後に構築されてきた欧州の安全保障体制を変容させるだけのインパクトがあると考えます。歴史的にも文化的にも近い東スラブのロシア人とウクライナ人の戦闘が一日も早く止み、平和が回復されることを切に願いたいと思います。

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